私は小麦をやめただけでずいぶん変化がありました。
ではなぜ、たった小麦を控えるだけでこれほど劇的な変化があったのか。それは、小麦に含まれる「グルテン」というタンパク質が関係していると、身をもって知りました。
日本人の食文化は、古くから米が主食。パンやパスタのように小麦を大量に摂取するようになったのは、比較的最近のことです。そのため、欧米人に比べて、グルテンを分解する酵素の働きが弱い人や、グルテンに対する感受性が高い人が多いと言われています。私もまさに、その体質だったのです。
さらに、現代の小麦の問題は、私たちの体の適応力の問題だけではありません。実は、小麦自体が悪いわけではないのです。問題は、私たち人間の「欲」のままに行われた品種改良にあります。
「どんな天候にも耐える強い小麦を」 「毎年安定して大量に収穫できる小麦を」 「もっとふわふわでやわらかいパンを」
こうした要求に応えるため、小麦は品種改良を重ねられてきました。その結果、私たちが今食べている小麦は、昔の小麦とは大きく異なってしまっているのです。特に、小麦に含まれるグルテンの量は、なんと古来種の約40倍にまで増えていると言われています。私たちの体が、これほどの量のグルテンを短期間で処理しきれるようには、まだ進化できていないのかもしれません。
グルテンが体に合わない場合、主に次のような問題を引き起こす可能性があります。
- 腸への負担と「リーキーガット」: グルテンは、腸の粘膜に炎症を引き起こしたり、腸の細胞間の結合を緩めます。これにより、未消化の食べ物や有害物質が腸の壁をすり抜け、血液中に漏れ出してしまう状態(「リーキーガット症候群」とも呼ばれます)を引き起こします。
- 全身の炎症反応と自己免疫疾患のリスク: リーキーガットによって血液中に漏れ出たグルテンやその他の異物に対し、体は過剰な免疫反応を起こします。この時、私たちの体の中で重要な役割を果たすのが白血球です。白血球は、本来であれば体に入ってきた異物を攻撃したり、体内で発生したがん細胞などを認識して攻撃したりする役割を持っています。 しかし、グルテンが血液内に入り込むことで、白血球の一つであるTNF-α(腫瘍壊死因子)という物質が過剰に産生されたり、その働きが乱されたりすることがあります。これにより、本来ならば自分を攻撃しないはずの免疫細胞が、自分の細胞や組織を誤って攻撃し始めてしまうことがあるのです。これが、自己免疫疾患と呼ばれる病気のメカニズムの一つと考えられています。私のヘバーデン結節や潰瘍性大腸炎といった症状も、このグルテンによる全身の炎症反応や免疫システムの乱れが深く関係していたと思われます。
- 消化器系の不調: グルテンは消化しにくく、腸内でガスを発生させたり、消化不良を起こしたりします。腹部膨満感や便通の乱れなども、この影響と思われます。
- 脳機能への影響: 腸の炎症が脳にも影響を与え、集中力の低下や、いわゆる「ブレインフォグ」(頭がぼーっとする感覚)を引き起こす可能性も指摘されています。
私の花粉症や乾燥肌、そして朝の倦怠感なども、このグルテンによる全身の炎症や免疫への影響が関係していた可能性と思われます。
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