Bスポット療法とは、「Bスポット」と呼ばれる上咽頭(じょういんとう)に、塩化亜鉛という薬液を直接塗布する治療法です。正式には「上咽頭擦過療法(EAT:Epipharyngeal Abrasive Therapy)」とも呼ばれます。
上咽頭とは、鼻の奥と喉の境目、つまり「のどちんこ」の裏側にあたる部分です。この部位は、空気中のウイルスや細菌、アレルゲンなどを最初にキャッチする場所であり、炎症を起こしやすい特性を持っています。また、自律神経や免疫機能と深い関連があるとも考えられています。
治療の仕組みと特徴
塩化亜鉛液を染み込ませた綿棒を、鼻腔または口腔から上咽頭に直接擦りつけることで、この部位の慢性的な炎症を抑えることを目的とします。炎症が強いほど、薬液が染み込んで強い痛みを感じることがありますが、これは薬が効いている証拠とされています。痛みは数時間から半日程度続くことがありますが、炎症が改善するにつれて痛みも和らいでいくのが一般的です。治療時に少量の出血が見られることもありますが、通常は自然に止まります。
Bスポット療法で期待される効果・適用疾患
Bスポット療法は、主に慢性上咽頭炎の治療に用いられますが、上咽頭の炎症が全身に及ぼす影響から、様々な症状や疾患の改善に効果が期待されています。
【主な適用症状・疾患】
- 耳鼻咽喉科系の症状:
- 上咽頭炎(喉の違和感、喉の痛み、異物感)
- 後鼻漏(鼻水が喉に流れ落ちる)
- 慢性咳嗽(長引く咳)
- 鼻づまり、嗅覚障害
- 耳の詰まり感(耳閉感)、耳鳴り、耳管開放症
- 全身症状・不定愁訴:
- 頭痛、頭重感
- 肩こり、首こり
- めまい(浮動性めまいなど)
- 全身倦怠感、慢性疲労症候群
- ブレインフォグ(集中力低下など)
- 自律神経失調症(うつ、不安障害、不眠症、パニック障害など)
- その他:
- IgA腎症(腎臓病の一種)
- 掌蹠膿疱症(しょうせき膿ほうしょう)
- 新型コロナウイルス感染症の後遺症(Long COVID)
治療の流れと注意点
治療の流れ
- 問診・診察:症状やこれまでの治療歴を確認し、内視鏡などで上咽頭の状態を診察します。
- 説明と同意:治療の目的や、痛みを伴う可能性があることなどが説明され、同意のもとで治療が行われます。
- 薬液塗布:塩化亜鉛液を浸した綿棒を、鼻または口から上咽頭に直接擦りつけます。処置自体は数十秒で終わります。
- 経過観察:治療後の痛みや出血の有無を確認し、症状の改善度合いに応じて次回の治療頻度などを決定します。
治療の頻度と期間
症状や炎症の程度によって異なりますが、一般的には週に1回から10日に1回程度のペースで通院し、効果が見られれば10回程度継続することが推奨される場合が多いです。症状が改善した後も、再発予防のために月に1回程度の治療を続けるケースもあります。
副作用と注意点
- 痛み:治療中や治療後数時間~1日程度、ヒリヒリとした痛みを伴うことが最も多いです。炎症が強いほど痛みも強くなりますが、炎症が改善するとともに和らぎます。
- 出血:炎症が強い場合に、綿棒に血が付いたり、治療後に少量の鼻血や痰に血が混じったりすることがありますが、ほとんどの場合は自然に止まります。
- 一時的な症状増悪:まれに、一時的に鼻水が増えたり、後鼻漏が悪化したり、倦怠感が出たりすることがありますが、通常は数時間から数日で落ち着きます。
- 嗅覚障害:非常にまれですが、嗅神経に触れることで嗅覚障害が起こる可能性もゼロではありません。
- 高血圧の方:一部の医療機関では高血圧の方には実施できない場合があるとされています。
Bスポット療法を受けられる場所と料金
Bスポット療法は、全国の耳鼻咽喉科医を中心に、限られた施設で行われています。全ての耳鼻咽喉科で受けられるわけではないため、事前に問い合わせて確認が必要です。
【料金について】
Bスポット療法は保険診療が適用されることが多く、3割負担の場合、1回の処置は数百円(400円程度)です。ただし、初回や定期的な評価のために内視鏡検査などが必要となる場合があり、その費用は別途かかります(3割負担で1800円程度)。
一部のクリニックでは、自費診療として設定している場合もありますので、受診前に確認することをおすすめします。
Bスポット療法は、長年の原因不明の不調に悩む方にとって、新たな選択肢となり得る治療法です。ご自身の症状に当てはまる場合は、この治療を行っている耳鼻咽喉科に相談してみることを検討してみてはいかがでしょうか。
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